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『漢字の知恵』(藤堂明保・徳間文庫)より
※「腹・覆・包・保・宝・浮の家族」へ!
包の字のまん中の巳印は、頭だけ生じてまだ手足のない胎児の姿、外側はそれを子宮内膜ですっぽり包んだ姿である。のち同じ腹から生まれた子を同胞といい、はら児を胞というのは、包の原義をよく残している。たいせつな物をすっぽり包むのをホウというのである。
<語根ホウ> ところで、このホウというコトバを表すのは、包の系列だけではない。呆─保─宝などもこの同じグループに属する。 呆は、子(赤ちゃん)をU型のオムツでたいせつに包んださまを示す。のちオムツを褓(ホウ)というから、保は褓の原字であるといってよい。幼児はだいじに包んで、風邪や外界の害を受けぬよう守ってやらねばならない。その守り役をする人を保という。今日の保護者・保証人の保とは、その意味をよく残している。保存するとは、言いかえればたいせつに包存することにほかならない。 それでは宝はどうであろうか。この字はもと「宀(やね)+玉+貝+缶」と書いた。缶はお酒を保存する腹の丸い土器のことで、日本ではホトギという。これも丸い腹に酒を包むようにして保存するのでホウという。玉や貝(財貨のこと)は、もとよりたいせつな財産だから宀(やね)で包んで保存せねばならない。つまり宝とは、保存すべき大切な物のことで包蔵することをまた宝蔵といいかえてもよい。
してみると、ホウというコトバから派生した何十という派生語を表すために、何十という漢字が作られていることがわかる。要するにコトバが先にあって、それを表す漢字があとに作られたのである。そこで漢字の外形だけを、どんなににらんでみてもその表すコトバの本当の意味はわからない。ましてや日本語に訳して、包(つつむ)─抱(いだく)─保(たもつ)─宝(たから)といってしまえば、相互になんの関係もない、バラバラの存在になってしまう。
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