掬−鞠−球 |
このキクという字の右がわ、つまり「掬−手」(キク)という部分は「米印+包という字の外がわ」からなっている。ばらばらに散ろうとする米つぶを外からまるく包んで、ぐっとまとめることを表した字である。
ところで綿や糸くずなどを中に包んで、外からまるくまとめると、マリができあがる。昔「蹴まり」という遊びがあり、そのマリのことを鞠(キク)といった。数年まえ琴平神宮で古式の蹴まりを見せてもらったが、中国では近世まで行われた遊びであった。このキクの語尾が弱まってキュウとなると「球」という字で表される。
掬−鞠−球は同系のことばで、いずれも「なかにたくさんのものをぐっと包みこんで、まるくマリ状にまとめた」という意味を含んでいる。
ご存じのように、キクの花は球状になっていて、たくさんの小花をまるく包みこんだ姿をしている。そこで草かんむりをそえて「菊」と呼んだのである。「球状花序」という植物学上の名前は、キク科の特色をよく表している。
「漢字の話U」(藤堂明保)より引用しました。
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